#2 フォトコンテストと景観の関係(2/2)|まちのこと
前編では「くりやま景観フォトコン」について解説しました。
後編では、くりやま景観フォトコンのもととなる「栗山町景観計画」を紐解きつつ「栗山の景観」について考えてみます。
「景観」という言葉の定義とは
その前に「景観」という言葉について、少し整理してみます。
実は「景観」という言葉は定義があいまいです。国が定めた「景観法」を見ても具体的な定義を示していません。また、学術的に見ても、それぞれの学問で景観の定義が違い、特定の分野の中でも識者により異なる場合もあります。
今回は、くりやま景観フォトコンと関係した記事ですので「都市計画」の学問分野を基準として見てみると、鈴木(2018)は、次のとおり景観を説明しています。
景観の認識は時代によって変化するものであり、近年では、里山や工場が建ち並ぶ景観など、それぞれの「景観」における関心が高まっています。
また、田村(2005)によれば、景観について次のとおり整理しています。
景観を地域の個性として認め、評価することにより「客観性をもつ美」となりうるものとしています。
栗山町の景観を整理する
さて、栗山町の景観の位置づけですが、栗山町景観計画は「栗山町総合計画」における景観施策に関する「個別計画」として位置づけられ、「栗山町景観条例」との連動の上、景観に関する施策を推進する、という仕組みとなっています。
この書き方だと少し分かりにくいので、別な言葉で置き換えると、総合計画が、これからの「町の運営指針」、景観条例が、栗山の景観づくりを行う基本的な「ルール」、景観計画が、栗山町の景観を維持・保全するための「ToDo(すること)リスト」、というイメージです。
「くりやま景観フォトコン」は、たくさんあるToDoの一つになります。
栗山の景観の構成要素
栗山の景観を形づくる骨格として、御大師山をはじめとする「自然景観区域」、農村地帯の田園風景や集落といった「農村景観区域」、商店街や市街地の「まちなみ景観区域」があり、この3つの区域を「景観的まとまり」としています。
また、町の西側を南から北へ流れる「夕張川の本流、支流」、緩やかなカーブが続く「幹線道路」、町を縦断するJR室蘭本線の「鉄道」の3つを「景観の軸」としています。
「景観的まとまり」と「景観の軸」に加え「町民の活動」が景観づくりに重要な要素となります。景観計画の理念は「人と自然にやさしいふる景観さとづくり」であり、雨煙別小学校が「雨煙別小学校 コカ・コーラ環境ハウス」として生まれ変わる際に行われた町民の手による塗装活動や20年以上続くハサンベツ里山づくり、花いっぱい運動や町内の一斉清掃など、町民による活動が、栗山の景観を維持・保全する上での大きな原動力となってます。
景観を守るために必要な規制と届出
景観づくりを行う上で必要な規制として、町民に対して「一定規模以上の建築物や工作物で工事をする場合、事前に届出が必要となる」ことがあります。
これは、家の新築や増改築、外壁の塗り替えなどを行う場合に、建物の高さや色彩を制限することで、景観に配慮したまちづくりを行うためのものです。どのような工事が対象になるかは、こちらでは明記しませんが「栗山町景観計画の運用指針(ガイドライン)」に、詳しい基準が示されています。
特に、家や外壁の色については、周囲と調和しない色彩の基準に合致しないものについては、変更を命ずる場合があります。
規制やルールから、栗山の景観をどう考えるか
田村は、「美しい景観づくりのために必要な主体は生活者である市民であり、市民の景観意識がその都市の景観の水準を決め、良い景観をつくるには、市民がその気になり行動を起こすことからすべてが始まる[1]」と、しています。
田村の言葉に従えば、栗山の美しい景観や町を作るのは、栗山の町民一人一人の手によります。しかし個人が好き勝手に奇抜な色や形の家を作っては、町全体の景観が損なわれる可能性があります。
そのため、統一された規制やルールを作る必要があり、それが栗山町の場合は、景観計画や景観条例となります。
ただ、これらは必ずしも町民を束縛するものではありません。景観計画の中には、くりやま景観フォトコンをはじめとした、町民が主体となる内容も多く盛り込まれています。
景観について考えるという機会は、規制や届出の中だけはありません。道路に落ちているゴミを拾う、家の前の雑草を抜く、田畑を見て四季の変化を感じる、ハサンベツ里山やオオムラサキ館にいって栗山の生物を観察してみる、栗山の農家さんの顔を思いだしながら旬の野菜を食す、といった日頃の行動の中でも多くの機会があります。
栗山の景観は、日々の町民の見えない努力の上に成り立っています。そのような意味でも、くりやま景観フォトコンは、ファインダーを通じて栗山の景観を考える良い機会となりうるものといえます。
※ 本稿は、2021年7月20日に行った取材をもとに作成しています。
おまけ:美しい都市景観づくりのための十九原則
今回、参考文献をもとに本稿を執筆しましたが、本の中で興味深い内容がありましたので、こちらでも紹介します。
田村は「20番目は各地域で追加してゆこう[2]」としてますが、栗山の場合は、どのような原則になるのでしょうか。
【注釈】
[1] 田村(2005) p.216より引用
[2] 田村(2005) p.219より引用
【参考文献】
・饗庭伸・鈴木伸治(2018)『初めて学ぶ都市計画(第二版)』市ケ谷出版社
・田村明(2005)『まちづくりと景観』岩波新書
・栗山町(2013a)「栗山町景観計画」
・栗山町(2013b)「栗山町景観計画の運用指針(ガイドライン)」