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#18 他者からの気付きを、カタチにする楽しさ|くりやまのひと

栗山駅から徒歩1分の場所にある「くりやまクリエイターズマーケット(以下、クリエイターズマーケット)」。

くりエイトするまち栗山町の合言葉のもと、町が運営している施設は「ものづくりをする方を応援する場所、人と人が繋がる場所」として、2017年9月にオープンしました。今では町内に限らず長沼町や由仁町、札幌市や江別市から多くのクリエイターが参加しています。

今回の主役である濱道俊介(しゅんすけ)さんは、札幌からクリエイターズマーケットに通う、クリエイターの一人。「cray'z parade(クレイジーパレード)」の屋号で、樹脂粘土やUVレジンを使用したアクセサリーや雑貨を創作しています。

濱道さんからは、創作活動の源流や、栗山町での活動に対する想いについてお聞きしました。


演劇での道具づくりがきっかけで栗山町へ

濱道さんは函館市の出身。5歳の時に札幌に引っ越してからは、札幌を拠点に生活をしています。中学時代からミニチュアづくりにハマるなど、手先を動かすことを得意としており、クリエイターズマーケットに来る前では樹脂粘土でフランスパンや果物など、静物作品を多く制作してきました。

クリエイターズマーケットの存在を知ったのは、後述する演劇を見にきてくれた女性からの紹介が始まりです。その女性からクリエイターズマーケットの説明を受けると、栗山で活動するには「栗山町にちなんだ作品を1点以上を制作す」が条件であると知ります。

前向きに思案していたところ「栗山町はオオムラサキが有名な町で幼虫もかわいいから、濱道さん作ってみてはどうですか」と助言を受け、参加を決意しました。

「大村さん」の生みの親として

濱道さんの手によって栗山で誕生したのが、もう一人の主役である「大村(おおむら)さん」。オオムラサキの幼虫をかわいらしくデフォルメした大村さんは、2018年に誕生しました。

「本当にうまくいくのか」と当初は心配していましたが、誕生から6年が経った今では、さまざまなイベントに現れてハロウィンなどの季節の衣装に身を包むなど、神出鬼没な存在として、すっかり栗山町の生活の中に溶け込んでいます。

撮影:腰本江里沙

虫が苦手な方もいますから、ほかのクリエイターと話しながら、目や口がかわいらしくなるよう試行錯誤しました。これまで、栗山に来てからは北海道や栗山を意識して、これまでの静物作品ではなく、オオカミやフクロウなどの動物もメインに創作しているんですけど、大村さんの反応が特に良くて驚いています


いろんな姿をした大村さんの反応を聞くのが楽しみ、という濱道さん。名前の由来についても確認したところ、

画像提供:濱道俊介

創作してるときは、最初は「オオムラサキの幼虫、オオムラサキの幼虫」と説明していたんですけど、だんだん家族やクリエイター仲間とやり取りしていくうちに「おおむらさん」と短縮することになりました。じゃあ名前を漢字の「大村さん」にしよう、というノリで現在の名前になっています。最近は僕自身も「大村さん!」と呼ばれたりと、分身みたいな存在になってきましたね(笑)

人見知りの克服がきっかけの演劇からから得た楽しさの源流

劇団員としての顔を持つ濱道さんは、取材時もハキハキとした受け答えが目立ちます。濱道さんにとって演劇は、四半世紀を超える大事なライフワーク。しかし、演劇を始めたきっかけは意外にも「恥ずかしがり屋を克服するために始めたもの」と答えます。

『ぐす子とふさわし列車』 脚本・演出担当、長岡による *出演者紹介11人目* ---------- 大人の事情協議会より、濱道俊介! 出演者中唯一の所属団員。紙コップ蹴りにハマミチという名の技を持つ。 役者としても全幅の信頼を置いておりかつ...

Posted by 大人の事情協議会 on Tuesday, July 4, 2023

高校卒業後、建築関係の仕事に就いて、リフォーム先の訪問営業を担当しました。当初はインターフォン越しの顧客に対して「おはようございます」すら言えないほど話すのが凄く苦手でした。克服するためにも、どうすればいいか考えていたところ演劇に目に留まり、ワークショップを体験したところ楽しく感じてしまって、それ以降、切れ目なく続けています。その甲斐もあって、恥ずかしがり屋も少しは克服できたのかなと思います

現在は、札幌にある劇団「大人の事情協議会」に所属し、演者して活躍しています。

劇団では大道具も兼任しており、そちらも好きなんですが、セリフを覚える難しさが楽しくて、どちらかといえば「役者」をしたい気持ちが強くて、ずっと続けていますね。自分の芝居や道具作りに対する達成感もありますが、芝居を見てくれた人たちが、次に会ったときに、感想や叱咤激励をいただき「濱道さんの芝居を見て、私も演劇を見るようになりました」と喜んでもらったときは嬉しかったですね。一生懸命やった証というか、自分の思ってもない事をお客さんの反応から発見できたりすると、続けていく原動力になります

栗山の活動でも同様で「活動を続けることができているのは、日々いただく、アドバイスや嬉しい反応のおかげ」と言います。

撮影:腰本江里沙

褒められるのが嬉しいというのもあるんですけど(笑)。特に嬉しかったことの一つとして、以前、山梨県北杜市の方が、栗山町に遊びにきていただいたことがあります。北杜市は栗山と同じくオオムラサキで有名な所で、オオムラサキ幼虫を作っている私と、大村さんに興味を持ったみたいで、そのために北海道・栗山に来たと聞いたときは、すごく嬉しかったですね。自分の作品を遠く離れたひとが知って、わざわざそのために栗山まで来てくるとは思いませんでした

cray'z paradeとして活動は

屋号の「cray'z parade」は、粘土の「クレイ」と、熱中しての「クレイジー」を掛け合わせたもので、「パレード」と冠するとおり、大村さん以外にもさまざまな動物を制作し「パレードのようなぎやかな場所(作品群)を創造する活動を続けていきたい」と語ります。

画像提供:濱道俊介

濱道さんが作るキャラクターの名称は特徴的であり、写真左上からマッコウクジラの「真向吠(マッコウホエル)」、シマフクロウの「袋小路突抜丸」(写真中央)、虎の「竹林虎々眈(タケバヤシココタン)」(写真右上)、ペンギンの「南極さん」(写真左下)、オオカミの「森野ガル朗」(写真中央)、バッファローの「河村バファ郎」(写真右下)など、かわいい見た目とは裏腹に尖ったネーミングが光る

昨年(2023年)12月には、町教育委員会主催のワークショップの講師として参加。「大村さんと鏡もち」をテーマに、多くの参加者が鏡餅に乗った大村さんの制作を行いました。

画像:町教育委員会

また、オオムラサキ館では館内に潜んだ大村さんを探すイベント「大村さんを探せ」も企画しており、濱道さん自身も大村さんと同じように、創作活動を通じて栗山の文化や生活の中にも溶け込んでいます。

今後の活動を、どのようにしていきたいか質問したところ。

一番人気は「大村さん」で、最近はそればっかり作ってますが(笑)、屋号にもある「パレード」のとおり、栗山でいろいろな動物を作ってみたいです。将来的には大村さんは「栗山町のキャラクター」として、僕一人の作品ではなくてもいいと思っています。皆さんのアドバイスの中から生まれたものですし、一緒に大村さんを制作したりして、皆さんとの活動を通じて、愛情の中で育った立派な大村さんになってもらいたいです

今日(10月31日)はハロウィンの日。栗山町図書館では「ハッピーハロウィンライブラリー」と称し、大村さんを探すイベントも開催します。

画像提供:栗山町図書館

栗山町のシンボルであるオオムラサキは、濱道さんたちクリエイターの手によって、新たな動きを見せつつあります。

濱道俊介さんの基本情報

撮影:腰本江里沙

創作活動 cray.z_parade
Creema:https://www.creema.jp/c/Cray_z_parade
Instagram:https://www.instagram.com/cray.z_parade?locale=it
演劇活動 大人の事情協議会
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※ 本稿は、2024年10月1日の取材をもとに広報くりやま2024年11月号で掲載した内容を加筆しています。

広報くりやま2024年11月号

文章:望月貴文(文化観光プランナー)
写真:腰本江里沙(移住コーディネーター)

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