#15 女子サッカーのプロの舞台に挑戦|くりやまのひと
先日、女子サッカー日本代表(以下、なでしこジャパン)がアジア最終予選で2024年パリオリンピック出場の切符を手にしましたが、その多くの選手が女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」に所属しています。
WEリーグは2021年から発足した国内最高峰の女子プロサッカーリーグ。
そのリーグに加盟するチーム「AC長野パルセイロレディース」に、栗山町出身でサッカー少年団「くりやまFC」に所属した、髙野瀬紫苑(こうのせしおん、神奈川大学4年生)さんが選手として加入しました[1]。栗山町出身の女子サッカー選手誕生は、初めてとなります[2]。
髙野瀬さんの活躍は、スポーツ新聞[3]やWEB記事[4]でも取り上げられ、来シーズンからの飛躍が大きく期待されています。
今回は髙野瀬さんから、これまでサッカー人生の振り返りや今後の目標などについて聞いてみました。
勝つ喜びを学んだ少年団時代
髙野瀬さんは2001年(平成13年)生まれ、小さいころから体を動かすことが大好きというアクティブな性格であり、男女の分け隔てなく遊んでいたと話します。
サッカーを始めたきっかけは二つ下の弟によるもので。くりやまFCでサッカーを始める姿を見ていつの間にか影響されていたようで、10歳でチームへの入団を決めました。
当時は、先輩に数人の女子選手も所属していましたが、同級生は0人。小学6年生になると仲良しの女友達1人が入団しましたが、常に男子に混ざりながらプレーだったと言います。
「当時はほぼ毎回全道規模の大会まで勝ち上がっており、サッカーがとても楽しかった。男子との実力差も大きく感じることもなく、勝つ喜びを感じられる日々でした」と語る高野瀬さん。
小学校卒業後は中学校の部活動には入部せず、本格的に女子サッカーの道を極めるため、町外からの女子選手も集まるクラブチーム「サンクFCくりやまU-15」に3年間所属します。
「勝つ喜び」の舞台は全国の舞台へ
高校では女子サッカー部のある北海道文教大学明清高等学校(以下、明清高校 ※現在は北海道文教大学附属高等学校)に入学します。
高校の校舎は札幌市(現在、恵庭市)にあったため、15歳で初めて親元を離れての寮生活を行うこととなり、活躍の舞台を町外に移しました。
当然、プロ選手や名門大学へ入学も意識するような環境でのスタートとなりますが、当時からその後を見据えて学校を選んだわけではなかったといいます。
また、入学時は主にMF(ミッドフィルダー)でしたが、この頃から正ポジションであるDF(ディフェンダー)のCB(センターバック)を確立。
チームの主力として主将も務め、チームを引っ張る存在として高いレベルでのプレーをしました。
髙野瀬さんの思いは現実となり、高校1年生から皇后杯や全日本選手権など、全国の舞台でプレーしました。
また、3年生時には出場したすべての全道大会(インターハイ、北海道女子サッカーリーグ、皇后杯、全日本選手権)を制覇し、見事4冠を達成するなど北海道No.1チームとして実力をいかんなく発揮。
夢の舞台を数多く経験したことで、さらに上のレベルでプレーがしたいと思った髙野瀬さんは、卒業後は女子サッカーの名門である神奈川大学への進学を決めます。
全国からプロの舞台
神奈川大学では、約60人という全国から集まった選手たちが所属するチームであり、ポジション争いも大激戦。しかし、持ち前の実力とプレースタイルを十分に発揮し、高校と同じく主将を務めるなどチームの指令塔として活躍するなかで、自身の気持ちも少しずつ変化していったといいます。
やがて、目の前の勝利に貪欲に取り組む熱い姿勢は、やがてプロチームの目にも留まり、新たな舞台への第一歩を踏み出します。
栗山町から世界へ。恩返しはプレーで見せる
プロへの挑戦が決まり、同級生やかつての恩師、地域の皆さんなどから多くの連絡が届いたといいます。
今年1月16日には、母校や恩師の元への挨拶に回り、夜にはサッカー人生の原点である、くりやまFCの練習にも参加しました。
これからの目標を聞くと「まずは試合に出ること。チームのレギュラークラスのメンバーに食い込めるように頑張りたい。これまで関わっていただいた指導者やチームメイト、そして両親への感謝を忘れず、プレーで恩返しができるように頑張りたいです」と話していました。
栗山から全国、そして世界へ。目指すは「なでしこジャパン」。これからの活躍を楽しみにしています。
注釈
[1]AC長野パルセイロレディース「髙野瀬紫苑選手の加入内定記者会見が開催されました」(2023年12月19日付け記事)
[2]プロでプレーする栗山町出身の選手は、男子では藤村怜(れん)選手(北海道コンサドーレ札幌[2018→2022]→いわてグルージャ盛岡[2023])→ザスパ群馬[2024~])以来となり、男子を含めると2人目となる。
[3]スポーツ報知「道文教大明清出身の神奈川大女子サッカー部・髙野瀬紫苑がWEリーグ長野からなでしこ目指す」(2024年2月3日付け記事)
[4]タウンニュース(神奈川県全域・東京多摩地域の地域情報紙)「神奈川大学女子サッカー髙野瀬さん、WEリーグに長野パルセイロ 加入内定」(2024年1月25日付け記事)
※本稿は、2024年1月18日の取材をもとに、広報くりやま2024年3月号で掲載した内容を加筆しています。