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#1 ものづくりのDNAが織りなす、夫婦二人三脚の洋食屋|くりやまのひと

夫婦念願のお店が栗山に誕生

2021年5月、栗山町に一つの洋食屋が誕生しました。その店の名は「モンテマローネ」。モンテはイタリア語で「山」、マローネは「栗」と栗山の地名にちなんで名付けられました。

昼はランチ、夜は居酒屋スタイル、全12席の小さなお店です。

モンテマローネを営まれているのは、佐藤武士(たけし)さん・倫夏(りか)さんご夫婦です。武士さんは37年間の経験と技術を活かし調理を担当。倫夏さんは店内の管理や注文など店の切り盛りを担当しており、文字通り「夫婦二人三脚」で経営されています。

新型コロナウイルスによる影響の中で、なぜ商店街の一角にお店を構えたのか、その背景や想いを店主である武士さんの話から少しずつ紐解いてみます。

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店内は、家主の趣味で開いていた喫茶店の内装をそのまま活用。窓も大きく多くの光が入るため、洋食屋の雰囲気と合う(写真:長広大)

料理の道は「ものづくり」の楽しさから始まった

武士さんは北海道江差町の出身。隣町の函館市内で過ごした高校時代は、自らお弁当を作る弁当男子でした。高校卒業後に札幌の専門学校に進みますが、アルバイトとして始めたレストランで、正社員に誘われたことがきっかけで専門学校を中退し、料理の道に進むこととなります。以後、札幌市や江別市を中心に、バーテンダーや居酒屋での勤務など、さまざまな食にまつわる仕事に就いています。

料理を自分の仕事にした理由を尋ねると、

「もとからゼロからつくるのが好きなんですよ、ものづくりが。料理も同じで、自分でつくったものを人に出したいというのがあって、決められた料理よりは、自分で考えたオリジナルのものを提供したい。」

その考えは、武士さんの祖父が家具職人だったこと、父が水産加工会社に従事していたこと、という「ものづくり」の精神がルーツにあり、得意科目が図工だったことからも武士さんにも、ものづくりのDNAが宿っているのではと感じます。

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これまでの経験の中で洋食や和食の技術を見つけたほか、中華料理店でも修行した武士さん。楽しむことから始めたことで、特定のジャンルにこだわらず、自分のスタイルを磨きつづけることにこだわりを持つ。倫夏さんは、そんな武士さんをサポートすることが楽しいようだ(写真:長広大)

栗山町で開業をした理由(わけ)

栗山との関わりは、町内にある居酒屋の立ち上げに関わったことが始まりです。倫夏さんもここ栗山で出会っています。お店を軌道に乗せたあとは経営を譲渡し、昨年(2020年)まで隣町の岩見沢市にある居酒屋で働いていましたが、新型コロナウイルスの影響により事業縮小の憂き目に遭います。

これからの進路を倫夏さんと一緒に考えた際、コロナ禍が明けても居酒屋時代と同じような働き方はできないと考えたこと、30代の頃から自分の店を持ちたかったことなど、さまざまな想いを巡らせたところ、折良く栗山町が始めたシェアキッチン「ヤムズキッチン」に出会い、日替わりシェフとして腕を振るい始めます。

当初は、提供するジャンルを決めていなかったそうです。お客さまの意見や反応を確かめながら、利用者が求めている料理やニーズから洋食店にしようと出店イメージを固めていきました。このような柔軟な考えは、自分を「何でも屋」と称する武士さんの考えならでは。

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ランチメニューのステーキピラフは、函館にある洋食店を参考に開発した。レストランの経験が今のメニューづくりの原動力になっている(写真:長広大)

栗山で出店した理由を訊ねると、お二人は2つの理由を示してくれました。1つは「顔がみえる関係でお店をしたかった」こと。札幌での仕事では、常連や顔なじみはいたが、お客さまからメニューの感想を聞いたり、世間話をしたりという深い関係になることは少なかった、といいます。反対に栗山では居酒屋時代から地元の人との交流が多くあったこともあり、その深い関係を手始めに開店に踏み切ることができた、といいます。

もう一つは「札幌と栗山の位置関係」。札幌から栗山まで車で約40㎞程度、約1時間の距離感を、お二人は「微妙な距離感」と表現しており、ランチを主力とすれば、ドライブ観光を始めとした日帰り観光客を多く取り入れる要素が栗山にあること。

その中には、自転車で空知方面までくる客層も視野に入っており、こちらは武士さんのライフワークとして、ロードバイクを楽しんでいた経験から得た着想になります。ロードバイカーに自分のお店を休憩場所や目的地として訪れて欲しいと想い、店舗裏には専用の駐輪スペースを確保しています。実際に週末になると、友人がロードバイクでご夫妻の元へ訪れています。

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ロードバイクの競技に参加していた40代の武士さん(写真左)。競技一辺倒だった現役時代には、北海道の代表選考に挑戦したことも(写真提供:佐藤武士)

昼と夜、異なるスタイルでの提供を

お店のこだわりを聞くと「お昼のランチと夜のディナーのスタイルを違う形にしたい」と話してくれました。昼のスタイルは「栗山の食材が食べられる店」。野菜は栗山産にこだわっており、食材の調達も町内の野菜屋さんから買い付けているほか、可能な限り栗山の農家さんから直接仕入れています。

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看板料理であるビーフシチューオムライス。卵は酒井農場の「とうきびたまご」、お米は國岡農場の「おぼろづき」を使用。いずれも栗山町の農家だ(写真:長広大)

夜は、昼と反対に「栗山ではなかなか食べられない店」。野菜は栗山産と変わらないですが、武士さんの独自ルートを駆使し、栗山ではなかなか見かけない食材を使った料理を振るまい、洋食屋にとらわれない形で町民の皆さまに味わってもらえるスタイルにしたいと考えています。

もちろん、昼も夜どちらも手作りで提供することを基本としています。ゼロからつくるのが好きだという武士さん。そのこだわりやスタイルを味わうためにも、足を運んでみてはいかがでしょうか。

※ 本稿は、2021年6月11日に行った取材をもとに作成しています。

追記:2021年9月24日

北海道の総合情報誌「HO」の2021年11月号120ページに、武士さんと倫夏さんが紹介されました。

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写真:望月貴文

モンテマローネの基本情報

住所:〒069-1511 北海道夕張郡栗山町中央2-80(栗山駅から徒歩5分)
電話:0123-76-7244
営業日:火曜~日曜 ※月曜・第2火曜定休
時間:【ランチ】11:30~14:00 【ディナー】17:00~23:00
支払い方法:クレジットカード・電子マネー可

文章:望月貴文(地域おこし協力隊) 写真:長広大(同左)

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