里親の手から1%の生存競争へ-夕張川からいってらっしゃい!-
新たな年度の幕明けとなりました。栗山町も草木も芽吹き、陽春の訪れを感じる日々が続きます。里山教育が盛んなここ栗山では、人と自然の共生に向けた活動もスタートしています。
4月2日(土)に、栗山では毎年恒例となる「サケ稚魚放流会」(主催:夕張川自然再生協議会)が、雨煙別小学校コカ・コーラ環境ハウスで開催されました。
サケの稚魚は町民による里親のほか「ふるさと いきものの里オオムラサキ館」や「栗山町総合福祉センターしゃるる」でも飼育される
15年目を迎えた同放流会。例年11月ごろ里親を募集し、約4カ月間、里親たちの手により育成された稚魚を放流します。稚魚たちは100匹中1匹しか戻ってこないという過酷な環境に旅立ち、1%の生存競争を勝ち取った猛者たちが4年後、故郷である夕張川へと戻ってくることになります。
今回は放流会の様子を簡単に紹介するのに加えて、おまけとして里親によるサケの成育日誌を掲載してみました。
サケ稚魚放流会の様子
バケツ一杯の稚魚。里親は10~20匹前後を卵の状態から引き取り、稚魚に育てる。(成育状況についてはおまけを参照)
夕張川自然再生協議会の会長である高橋慎(まこと)さんの挨拶
放流会の様子。夕張川の支川である雨煙別川で稚魚を放流した
放流はプラスチックコップに移して行う。飼育した水槽の水温と川の温度は10度前後の温度差があり、稚魚がびっくりして溺れることも。川の水をコップに移しながら、水温に慣れされる必要がある
※ サケの放流事業については、広報くりやま2020年6月号で特集を組んでいます。こちらも参考にしてください。
出典:栗山町(2020)「広報くりやま6月号」pp.2-7
おまけ:成育日記
今回は、サケの里親である町内在住の田中成明(しげあき)さんのご協力により、卵から稚魚までの成育状況を記録してみましたので、里親となるときの参考にしてみてください。
サケの一生(オオムラサキ館展示物)
資料提供:「ふるさと いきものの里オオムラサキ館」
1 卵:9月~12月
卵黄は赤みがかかったオレンジ色。産卵床(川底の砂利の下)ですごしている。産卵から約1ヶ月(30日)で発眼。約2ヶ月(60日でふ化)。ふ化が近づくと卵内で動く
2 仔魚(しぎょ):1月
生後15日前後。お腹にさいのう(卵黄のう)という栄養袋があり、胃も未発達なためエサをたべない。紫外線に弱く、影響の少ない産卵床(川底)の周りで過ごす
3 後仔魚(こうしぎょ):2月
生後25日前後。お腹のさいのうが小さくなるにつれ、稚魚の姿へ徐々に近づく、川底から浮上し始め、エサもとり始めるなど稚魚の状態へ変化している時期
3 稚魚:2月~春
生後55日前後。体側にパーマークと呼ばれる、黒い丸模様が目立って現れる。さいのうが消え、産卵床から浮上し泳ぎ、昆虫などのエサを食べる。野生下では川を下り始める
文章・写真:望月貴文(地域おこし協力隊) 画像:田中成明(サケの里親)
協力:ふるさと いきものの里オオムラサキ館