#1-4 ジオパークとして名高い「アポイ岳」から栗山へ|とくしゅう
まんまの会|北海道・様似町
栗山から200㎞ほど離れた場所にある北海道日高管内・様似町。「アポイ岳ジオパーク」として、2008年に日本ジオパークの認定を受けた様似は、2015年には「ユネスコ世界ジオパーク」加盟を果たし、貴重な大地の遺産として、豊かな自然環境と由緒ある歴史文化を丸ごと学び楽しめる地域づくりを目指しています。
その様似から「まんまの会」という女性グループがヤムズキッチンにやってきました。今回は、代表の前田寿子(ひさこ)さんから活動の内容を伺いました。
様似市街地の様子。様似はカンラン岩という超塩基性の特殊な土壌条件や海に近く海霧や強風の影響を大きく受け、標高が低いながらも高山植物が育成し、ヒダカソウなど数多くの固有種が生育している。ナキウサギの生息地でもある。(写真提供:様似町)
地元・様似に伝わる家庭料理を記録に残す活動
まんまの会は、2014年に閉校した北海道様似高校の同級生たちで結成した女性グループです。様似に伝わる伝統料理を始め、様似に住む家庭に伝わる味を記録・再現する活動をしています。
現在は7人が定期的に活動しており、会員全員が本来の仕事を持つ中で、お正月や節分、おひな祭りなど時節のイベントに併せて、日高管内や様似の食材を使った料理を振る舞っています。
旧国鉄様似駅で販売していた駅弁を再現
北海道の日高沖を走る鉄路「JR北海道・日高本線」。その日高本線の終着駅には様似駅がありました。1937(昭和12)年に国有鉄道(旧国鉄)の駅として開業した様似駅は、長らく様似の人たちの生活の足として活躍していました。
しかし、2015年1月7日・8日に北海道を襲った暴風雪による高波の被害により路線の一部に被害を受け、鵡川駅-様似駅間が不通となります。しばらくは代行バスで運行していましたが、復旧を果たせないまま、2021年4月に同区間は廃止となりました[1]。
様似駅で代行バスの最終運行に合わせて行われたセレモニー。様似町役場は、最終便が発車する様子を動画にしており、まんまの会は00:31に登場している。(映像元:さまちゃん「ありがとう日高本線『様似駅』」)
まんまの会では、旧国鉄が民営化される以前より様似駅で販売されていたという、2種類の駅弁の再現に取り組んでいます。再現した駅弁は「つぶ貝弁当」と「鮭弁当」であり、様似駅前で営業していた「レストラン味よし大将」の商品です。
レストラン経営者の親族から、どのようなものが入っていたかを丁寧に聞き取り、レストラン味よし大将の家族に試食してもらいながら、試行錯誤を重ねた結果、完成させたものです。
ヤムズキッチンで提供したつぶ貝弁当。地元産のつぶ貝と北海道産の餅米を使ったおこわのほか、タコのマリネや昆布巻が添えられている。地元で採れる海藻「松藻(まつも)」が入った味噌汁もセットで販売した。
様似以外の活動の場を求めて
新型コロナウイルスの影響もあり、思うような活動ができなく苦慮していたまんまの会ですが、折り良くヤムズキッチンの話しを聞きつけ、参加を決意します。
初出店となる2021年7月は、つぶ貝弁当を提供し、内陸に住む栗山町民の反響を受けました。2回目の出店の取材日(8月19日)では、開店1時間で用意した40食分を完売するという嬉しい事態に。お弁当を買った人の中には、様似の出身者もおり、ここ栗山の地で様似の話しで花を咲かせている場面にも遭遇します。
11月は違うメニューを考えているという前田さん。「コロナ禍が収まったら、他の地域にも自分たちの様似の味を広げていきたい」と語り、さらなる活動にむけ意欲を見せています。
取材日は、1人を除いた6人が参加。様似から栗山へは車で片道3時間もかかる長距離移動となるが、道中は高校時代に戻ったように会話に花を咲かせているという。移動が困難な冬期は、地元の活動に専念するようだ。写真中央下が前田代表。
注釈
[1] 現在の日高本線は、苫小牧駅-鵡川駅間のみの運行となり、廃止の期間はバスが運行している。
参考文献
・様似町アポイ岳ジオパーク推進協議会
※ 本稿は、2021年8月19日及び9月16日に行った取材をもと、広報くりやま2021年10月号に掲載した内容を補完したものです。
文章・写真:望月貴文(地域おこし協力隊)