#12 栗山煉瓦創庫くりふと4月1日グランドオープン-栗山駅南交流拠点施設(2/2)|とくしゅう
4月1日(土)にグランドオープンを迎えた栗山駅南交流拠点施設「栗山煉瓦創庫くりふと」。オープニングセレモニーでは、新たな施設のオープンを祝うテープカットのほか、内覧会では施設紹介やくりふとキッチン出店事業者によるキッシュやパウンドケーキなどの試食会が行われました。
また、セレモニーの後と翌日に開催されたオープニングイベントでは、トークイベントや「くりふとキッチン」による日替わりの飲食メニューの提供をはじめ、「パン工房栗の木」によるパンや焼き菓子の販売、地域おこし協力隊によるキッチンカーでのクレープ販売、「ファブラボ栗山」のレーザー加工機でのものづくり体験などが行われ、2日間で850人を超える来館者が施設を訪れました。
さらに4月8日(土)・9日(日)「くりやま老舗まつり」では、くりふとでも連携イベントを開催し、2日間で約3,500人と多くの方が訪れました。
前回では、くりふとのスペースやサービスに関する概要をお伝えしました。今回は開設に至った経過や名称について掘り下げてお伝えしていきます。
長年に渡った計画づくりと施設整備
くりふとは、本町の長年の懸案であった新町通りの再生を含め、中心市街地区の諸課題の解決と賑わいづくりに向けた「栗山町中心市街地都市再生整備計画(平成30年度~令和4年度)」の一環で、集客と交流の拠点施設として整備されました。
どのような施設として活用していくのか、当初は町民アンケートの結果も踏まえながら新町通り将来ビジョン実現化委員会において検討が進められましたが、具体案まで詰めることが難しい状況であったことから、行政職員によるプロジェクトチームが引き継いで検討が進められました。
中心市街地都市再生整備計画における課題に加え、行政関連政策事業における課題も含めながら、2019年7月に活用方針を策定し、町民への説明や意見聴取を経て、2021年8月に活用計画を策定し、同年9月に整備が着工されました。
整備は栗山駅から約150mの南東方向、原っぱ駐車場の隣に位置する町内に残る数少ない既存のレンガ倉庫を改修。倉庫は1961年に建築され、JAそらち南の保管倉庫として長年利用されてきた歴史を感じさせる趣のある建物です。
2022年9月に施設整備が完了し、町民へのお披露目と各種サービスの試行・検証を行うため2023年1月にプレオープン。先月4月にグランドオープンを迎えました。
人口減少の危険性と関係人口の重要性
現在、国内では総人口の維持と東京圏への一極集中を是正する地方創生が進められていますが、依然として多くの地方では地域社会の担い手が減少しています。
地域経済が縮小することにより、更なる人口減少を加速させる負の連鎖に陥っているほか、まちの機能が低下することで地域の魅力・活力が損なわれ、生活サービスの維持が困難になっています。
栗山でも将来人口を維持すべく、さまざまな施策を講じていますが、若年層が減少し高齢層が増加する人口減少に歯止めがかからない状態が続いており、危機的な状況にあると考えられます。そこで、地方創生の推進で注目されているのが「関係人口」という考え方です。
特に都市の若者を中心に地方での活動に関わりたいという志向の高まりなどを背景に、地域と多様に関わる人々を指し、地域への強い思い入れと継続的な関わりによって興味や関心を高め、地域づくりに自ら参加する意思のある人たちです。
これまでは、買い物や観光目的などで地域へ訪れる「交流人口」のほか、地域に居住する「定住人口」の獲得に向けた施策は講じてきましたが、今後はこの間に位置する「関係人口」に対し、効果的に働きかける施策が必要となります。
目指す未来像ともたらす効果・利益
くりふとは前回お伝えしたとおり、休憩・飲食スペースの開放やイベント開催をはじめ、キッチンでの飲食チャレンジ出店、展示ホールでのポップアップストア出展、ファブラボ栗山でのものづくり体験・活動など、様々なサービスを提供しながら、来館者ご自身の新たな活動場所としてご利用いただく施設としています。
最初はイベント参加や商品購入などを目的にくりふとに来られた方が、何度か訪れて交流することで次第に興味関心が高まり、自身がイベントを主催したり商品を販売したりなど新たな行動にチャレンジする人材へと成長していきます。
その結果、町への愛着や誇りも高まり、自発的に継続して活動・活躍する存在となり、更に多くの人たちが集ってくる展開をイメージしています。
くりふとを拠点とし、町内外問わずまちへの関与意欲を高めながら活動・活躍する関係人口を創出し、中心市街地だけでなく町内全体に活動・活躍する人たちと賑わいが広がる未来を望んでいます。
このような未来が実現されると、まちにはさまざまな効果がもたらされます。例えば、町内に新たなイベントや行事、サークル団体、商品・サービス、店舗が生まれ、それを求めたり刺激を受けたりすることで、町民の行動意欲が促されて生活が豊かになるかもしれません。
また、関係人口が地域活動や就労活動に携わることで、会員減少や高齢化が進む団体、従業員や後継者不足に悩む企業・店舗における担い手、さらに、移住により定住人口となる場合においては町内会・自治会活動の担い手となるかもしれません。
あるいは、関係人口が起業やビジネス展開を通して、町民の新たな就労機会(雇用)が生まれるかもしれません。新たな話題が生まれ、町外者の興味関心と行動を促してまちに賑わいをもたらし、町民にとっても地域の魅力を再認識して地域への愛着が高まることも考えられます。
地域の未来を担う子どもたちにおいては、普段の生活の中で地域活動への参加機会が増えたり、学校や家庭内での話題が増えたりすることで、魅力と愛着のある地域であることを認知し、まちへの誇りと自信を持ちながら成長します。
進学や就職のタイミングで一度は地域を離れた後も、ふるさと意識により自らが次なる関係人口として地域のために行動を起こしたり、Uターンで帰ってきたりなど、地域の担い手としての確実さが高まることも考えられます。
また、これまで地域を支えてきた高齢者においては、担い手を育成する側に回りながら、後継者不足により長年にわたり引き受けてきた役回りを引き継ぐことができ、他の地域活動に参加したり、趣味に時間を傾注したりすることでライフワークが充実することも予測されます。
一方、行政でも、地方自治の取り組みに関わる人材が増えることや、税収・ふるさと納税の増加により政策に充当する財源を確保できることで、行財政経営の安定化と公共サービスの維持・拡充を図ることができます。
人口減少で起こる様々な課題や影響も、徐々にこのような地域の環境が好転することで、町民一人ひとりがまちへの愛着と関心を持ち、行動変容することで、さらなる関係人口や定住人口を生み出せる未来を目指していきます。
呼称に込められた思い
公式名称は「栗山駅南交流拠点施設」ですが「栗山煉瓦創庫くりふと」という呼称をつけています。
本施設は、町民をはじめ町に関わる人たちが活動し交流するためのコミュニティスペースとしています。呼称の前半部分は外観イメージとして認識されやすい「煉瓦倉庫」とし、倉庫の「倉」の文字を「創る、創造する」を連想させる「創」に置き換えています。
後半部分の「くりふと」は、栗山町の「栗」と、接ぎ木を意味する英語「graft =グラフト」を掛け合わせた造語で、覚えやすい平仮名で表現しています。
接ぎ木は、果樹などでより良い実を生らすために用いられますが、施設に集い活動・活躍する人たち(関係人口)を接ぎ木になぞらえ、栗の木が元気に成長していくように、まち全体が活気づいていく様子をイメージしています。
栗山町に愛着を持てる場所
くりふとの呼称とロゴには「町内に点在するまちの魅力と来館者が繋がり、大きな栗の木のように強く太く、長く生きるまちになってほしい」という想いを込めました。
まちの魅力が集結した施設になり、その魅力を多くの方に知ってもらうため、町民の方にこそ更にまちを知ってほしいとも感じています。くりふとの利用方法はとても自由。友人とのお喋りもよし、仕事や勉強、空き時間を潰すのもよし。何度も足を運ぶうちに、特産品に興味を持ったり、キッチンの料理に感動したり、スタッフの方と仲良くなったり…そんな風にまちのヒト・モノに触れる機会が増えてほしいです。
私自身、町の事業や多くの方との関わりの中でまちの魅力に気付き、愛着を持つようになりました。ただ町外から人が来るだけではなく、町民との交流が生まれる拠点となり、まちが成長していってほしい、というのが“接ぎ木”をコンセプトとした理由です。くりふとで町内外問わず“栗山町ファン仲間”が増えることを楽しみにしています!
栗山煉瓦創庫くりふとの基本情報
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※ 本稿は、広報くりやま2023年5月号で掲載した内容を修正・加筆しています。