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#3 栗山を彩る12の色(1/2)|まちのこと

自分たちが住む「まちの色」

北海道は夏から秋を迎え、栗山町では稲刈りをはじめとした収穫期を迎えます。周囲の山々も、緑の葉っぱが赤や黄に染まり、色の変化を楽しむ季節となりました。

色は、私たちの身の回りの空間にあふれています。栗山には「栗山の色」という「まちの色」があります。町がブランドイメージの定着を図るため、2019年に指定したものです。

今回は、栗山の色の取り組みの中心を担った、元・和信化学工業株式会社(以下、和信化学工業)の宮川多恵(たえ)さんと、担当した町若者定住推進課・金丸佳代(かよ)さんから、栗山の色について伺いました。

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宮川さん(写真左)は、現在は一般社団法人さっぽろ下町づくり社の理事として、札幌市創成東地区のまちづくりを進めているほか、カラーコーディネートの資格を持つ。金丸さん(写真右)は、くりやまクリエイターズマーケットの運営や、若者・子育て世代を中心にした移住・定住に向けた取り組みを行っている。

きっかけはクリエイターの言葉から

栗山の色が生まれたきっかけは、くりやまクリエイターズマーケットで活動する人の一部から「札幌景観色のように、栗山の色をつかった創作をしたい」という言葉からでした。

札幌景観色は、2004年に札幌市が景観まちづくりのために大型建築物の外装の色として、札幌のイメージカラーとして選ばれた70色。その札幌景観色を、札幌のクリエイターが使用できるようにと、宮川さんをはじめとした和信化学工業が塗料素材として開発しました。

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札幌景観色には「ライラック」や「モエレ沼」「三角山」などの札幌の名物や観光地や、「煉瓦」「札幌軟石」といった歴史的建造物など、札幌の歴史や風土、文化に関連した名称が付けられている。
出典:札幌市「色彩景観基準運用指針(札幌の景観色70色)」p.4

しばらくは、札幌のクリエイターが中心となって使用されていましたが、徐々に他の地域のクリエイターにも浸透。栗山でも町内のクリエイターが札幌景観色の塗料を使うようになり、栗山でも独自の色を求める動きとなりました。

どのように栗山の色が作られたのか

クリエイターから相談を受けた金丸さんは、宮川さんにどのように色をつくればよいかを相談しました。宮川さんは当時、北海道小樽市や北海道森町で、民間団体が中心となって「まちの色」を作る活動に携わっていました。

栗山の場合は、町が主体となって行うためには、役場の関係者だけではなく、町民を巻き込みながら自分たちの色を考えるほうが望ましいとし、意欲のある町民を集めワークショップを実施することとしました。

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ワークショップには、活動に興味を持った農家、建築士、クリエイターなど色に関心をもった町民10名が集まり、半年間に渡り3回のワークショップを経て、栗山の色を指定した。

ワークショップでは、まず「自分たちの町である『栗山』とは何か」を考え「栗山公園」といった、自分たちの町のイメージを膨らませた「単語」を集めます。

集まった単語から、色相[1]を意識して分別。分別後、色見本帳を用いて、それぞれの出てきたワードに合った色を設定していきます。

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色の指定に用いたのは「日本塗装工業会塗料用標準色」。候補の中にも栗山になじみ深い単語もあったが、同じ色相で固まったりするなど、落選してしまった単語も多かったという。(写真提供:宮川多恵)

宮川さんが設定した色の中から、ワークショップ参加者が、1つずつ検討し、最終的には下の写真のとおり12色が残ることとなりました。和信化学工業は、栗山の色を木材塗料として開発。きっかけを作った町内のクリエイターが、創作活動の中で栗山の色を使用できる環境を整えました。

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写真左上から、にごり酒、栗山公園、泣く木、栗、さらさらレッド、じゃがいもの花、稲穂、ハサンベツ里山、角田獅子舞、栗山青年ブルー、オオムラサキ、酒蔵の12の色が「栗山の色」となった。いずれも栗山に馴染みの深い言葉がそろっている。(写真提供:宮川多恵)

栗山の色をどう活用していくのか

町民有志のワークショップを経て完成した「栗山の色」。金丸さんにどのような形で用いていきたいかと聞くと「色を通じて、ものづくりや日常の暮らしの中で、栗山を感じてもらえるようにしたいとのことで、印刷物や教育活動、創作活動のなかで使用できるようにしていきたい、語ります。

所属の若者定住推進課では、2019年の12月に町内のクリエイターと連携して、角田小学校で栗山の色を使ったワークショップを開催。栗山町の家具メーカー「オークランド」の協力を得て、家具の廃材を活用したおもちゃづくりを行いました。

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角田小の児童を相手に教鞭を取る腰本江里沙さん(写真上)。腰本さんは、今回は移住コーディネーターとしてではなく、クリエイターの立場で栗山の色を解説した。児童たちは好きな色を使い塗装したあと遊んだという(写真下)。

金丸さんは、今後も栗山の色の活動を通じて栗山町のブランドイメージの形成・向上を図っていきたい、と語ります。

自分たちの「まちの色」を組み合わせ、楽しむ

宮川さんは、栗山の色は創作活動で行うことを意識しているため、1色での使用はもちろんのこと、2色・3色といった、複数の色を組み合わせても違和感のない色合いが表現できるように調整しました、といいます。実際にクリエイターさんの中でも、複数の栗山の色を使い作品として出品しているものも多く見られます。

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写真は栗山の色を使用したブローチで、クリエイターの1人である「海蒼 絵葉書館(しーそー えはがきかん)」の作品。マーケット内では、栗山の色を使用した作品も多い。

くりやまのおとでも、サイト内の背景色やそれぞれのコンテンツで栗山の色を使用しています。背景色はとしており、コンテンツの一つである「くりやまのひと」は稲穂、「まちのこと」はじゃがいもの花を使用しています。

取材の終わりに、宮川さんは「今回は12の色に決まりましたが、ワークショップの中では、40から50個の単語と色が生まれていたんですよね」と教えてくれました。栗山の色の活動が、活発に行われていけば、第二、第三の栗山の色が増えてくるかもしれません。

後編は、「栗山の色」の塗料の購入方法やデジタル色見本を紹介します。

【注釈】
[1]赤、オレンジ、黄、緑、青、紫といった色の様相の相違のこと

【参考文献】
・札幌市「色彩景観基準運用指針(札幌の景観色70色)」

※ 本稿は、2021年8月25日に行った取材をもとに作成しています。

文章・写真:望月貴文(地域おこし協力隊)
写真:腰本江里沙(移住コーディネーター)


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